球根の掘り上げ方 ~開花後から球根の保存まで~

チューリップの1年

チューリップの1年間

チューリップは球根から育つ「球根植物」です。秋に植えて・春に花が咲く、を球根をベースに繰り返します。ここでは「開花後のチューリップ」「球根の掘り上げ方「球根の保存」を順を追って説明していきます。

もし、チューリップの球根を育てない、という方は読み飛ばしてOKです。そのまま植えっぱなしでも球根が残る限り1年のサイクルを繰り返しますが、2~3年で球根が育たずに消えてしまいます。

チューリップ「アルビレックス」に限らず、チューリップの他品種も同じように植えて・掘り上げることができます。ご参考までにどうぞ!

開花後のチューリップ

何で花を摘むの?

チューリップは秋に植えた球根の力で育ちます。この球根を親(親球)とすると、春に花が咲いた時にはその力を全て使い切り、親球は消えてしまいます。そこで、花が咲いた後に花を摘み、本来は種子を育てる力を子球の球根の肥育に切り替えてもらいます。これが花が終わった後に花を摘む理由です。

花を摘まずにそのまま育てていくと、雌しべの中に種子ができます。ちなみに、この種子を土にまけば次のチューリップが咲きますが、花が咲くまで数年かかるうえ、親と違う品種になることも。子球は親球の分身ですから、次の秋に子球を植えれば同じ花が咲く、ということです。

花を摘むタイミングって?

せっかく咲いてくれたのですから、ギリギリまで楽しんでもらって大丈夫です。ただし、落ちた花びらをそのままにしておくと病気の原因になりますので、拾っておいてくださいね。

花は、花の付け根~一番上の葉よりも上の間で摘んでください。葉は光合成のために残しましょう。

チューリップは気温によって閉じたり、開いたりを何度も繰り返しますが、気温の上昇や交配の終了などによって、あるタイミングから花びらが閉じなくなります。やがて花びらが落ちて、花の季節は終わります。この「あるタイミング」からが摘みどき。同じ品種でも開花のタイミングが違うように、摘みどきも1本1本違います。摘みどきを逃してしまっても大丈夫! でも花びらは拾ってね! 少し早目に摘んでお部屋に飾ったりしてもいいですし、短い開花期を楽しんでくださいね!

おっと、そうそう! 開花したらTwitterで「#アルビチューリップ」で発信お待ちしてま~す!

花を摘んだあとは?

ここからは「土が乾いてきたら水やり」です。球根を掘り上げる5月下旬~6月上旬までの間、チューリップ全体が黄色っぽく枯れてくるまで続けます。

土の中の球根は根から水分を摂取しますので、雨が2日降らなかったら土を触ってチェックしてみてください。冬と違い、日中も気温が上がってきますので、土の表面だけ乾いていることがあります。ちょっと指を土に挿してみてチェックするといいでしょう。この季節は少しドライ気味かな? くらいが失敗しません。

そろそろ掘り上げどきかな? と思ったら、そこで水やりは終了! そこから3~5日ほど置いてから球根を掘り上げます。もしこの間に雨が降るようでしたら、プランターや鉢植えの方は雨に当たらないように軒下などに動かせるとベストです。

葉が黄色く枯れてきたら光合成が終了したサイン。下の画像のように、大きな葉が2枚とも枯れはじめ、全体的に黄色っぽくなってきたらOK! もっと枯れてからでも大丈夫ですが、このくらいの方が作業がしやすいです。

▲650型プランターに10球植えました。花摘みから約3週間ほど経過しています。

球根の掘り上げ方

さあ、いよいよ球根の掘り上げです!

…のまえに、土が乾いているか、ちょっとチェックしてみてください。球根を掘り上げる3~5日ほど前で水やりは終了している場合、土はやや乾いた状態になってきていると思いますが、掘り上げ当日が雨・もしくは土がまだ水分を含んでベッタリ重い場合は日延べしましょう。

この掘り上げ作業は梅雨前に球根の乾燥まで終わらせることが重要。雨の日に作業しないのは、球根の乾燥が進まない&球根を傷つける恐れがあるからです。多少掘り上げが遅れても大丈夫! 晴れてなくても降らなければOK!

球根を掘り上げる

チューリップの球根は、当たり前かもしれませんが、茎の下にあります。そこから少し離れたところにスコップを深く入れ、てこの要領で起こします。あまり近い位置にスコップを入れると、隣の球根を刺してしまうことも。スコップが使えない場合は土をほぐしながら手で掘りましょう。地植えの場合は球根から少し離れた場所から掘り始めても。

▲白く見える球根が育った子球。育ってくれたことにホッとする瞬間です。

そのままスコップごと持ち上げるか、球根がバラバラにならないようであれば手を入れて球根ごと持ち上げます。根が張っているので、意外と手ごたえがあると思います。根までゴソッと掘り上げてOK!

▲思っているより立派な根っこ…素晴らしい! そりゃー手ごたえある訳だわ。

土がついたままだと乾燥が遅れます。根や球根に付いた土は、手やプランターなどの縁で軽くたたいて落としましょう。100%キレイに土が落とせなくても問題ありません。この段階では、ある程度落とせれば大丈夫です。上の画像の球根は、外皮が湿って破れていました。自然と取れてしまいそうな外皮は手で取ってしまって構いません。

▲根っこの土も落としたらOK! 土が乾いていると作業しやすいうえ、球根を傷つけるリスクが減ります。

上の画像のように土と、余分な外皮を取ったら次の球根へ! 晴れてるうちに終わらせるぞー!

もし、ふにゃっと柔らかく腐った球根(甘い漬物のような発酵臭がします)があったら……残念ですがここでお別れになります。他の球根と一緒にしておくと、カビが出て他の球根に移ったりすることがあります。
また、一部が傷んでいる場合、判断を乾燥後に保留してもOKです。ただし、他の球根とは分けておきましょう。

球根を乾燥させる

掘って土を落とした球根は、まずそのまま1週間ほど全体を乾燥させます。掘り上げた当日からカゴなど通気性のいい入れ物に新聞紙1枚を敷き、根や葉を付けたまま入れておきます。画像にはありませんが、この上に新聞紙を1枚載せて直射日光を避け、風通しのよい場所で乾燥させます。もし湿気が気になる場合は、翌日に新聞紙を交換して、球根同士がくっつかないよう並べ替えて湿気を逃がしてあげてください。この時期であれば3日もあれば湿気は逃げます。

風通しのいい場所とは空気が淀んで換気できない場所でなければいいという感じです。

1週間ほど乾燥させた後、根や葉・茎を外します。球根は複数に分かれていると思いますが、全部バラす必要はありません。自然と外れたものはそのままで大丈夫。球根だけにして、同じようにさらに1週間ほど外皮を乾燥させます。 球根を触ってみて表面が乾燥していればOK。

判断を保留した、一部が傷んだ球根については全体に腐食が進んでいる場合はやっぱりお別れしましょう。逆に、乾燥して枯れた球根はカラカラ&スカスカで軽くなっていると思いますが、こちらもお別れ。傷があるけれど外皮が乾燥している場合はOKです。どうしても判断がつかない場合は別に保存し、秋に植える直前に判断を保留しても。

▲乾燥が終わったアルビレックス。新聞紙がカゴより大きいのは、球根がカゴから落ちるのを防ぐため。乾燥期間中は日に一度、上下を入れ替えています。

掘り上げた後の土はどうしよう?

チューリップは連作を嫌う植物です。連作とは同じ植物を同じ土壌に続けて植えることで、チューリップを掘った土をそのまま秋の植え付けに使うと、土に残った残留菌による病害・栄養の過不足による育成障害等を起こすことがあります。ちなみに、チューリップの球根を育てている農家さんでは毎年違う畑に球根を植えて連作障害を回避しています。では土をどうしたらいいのでしょう?

【方法①】プランターや鉢植えなら、土を一度ふるってキレイにする

天気のいい日に、ビニールシート等を広げ、土と鉢底石をふるいながら分けて広げて干します根や葉などの残骸は拾って捨てましょう。後はビニールシートに広げた土を日光に当てて干します(日光消毒)。量が多いようなら、何度か上下をかえしてあげるとベストです。その間にプランターなどは一度洗って干しておくといいですね!

すぐに干した土を使わない場合は、土のう袋などに入れ、雨の当たらない場所で保管しましょう。

土を干したあと次の植物を植える場合は、 プランター等へ鉢底石を戻して使います。土は減っていると思いますので、腐葉土や培養土・肥料などを混ぜて使ってください。夏花などを植えるのも楽しいですよ! 秋に再度チューリップを植える場合は、同じ手順で土を再利用します。最近は「土の再生剤」というものも。植え付け前までに土を作る必要がありますが、手段のひとつとしてアリだと思います。

【方法②】地植えの場合は、秋まで他の植物を植えて、秋に石灰をまく

球根を掘り上げる際に、できるだけ葉や根などの残骸を取り除いておくと後の作業がラクになります。土をよく耕し、肥料を土に足してよく混ぜ、夏花などを植えます。聖籠花壇では夏にマリーゴールドを好んで植えていますが、これは根の張りもよく、暑さに強く、水やりも他の植物より少な目で済むため、手間がかかりません。おまけにオレンジ色の苗を買えばお庭をオレンジに!

夏花のほかに、谷口農園さんのように夏野菜を植えるのもひとつの手段ですが、トマト・ナス・ピーマンは連作を嫌いますのでご注意を!

石灰は必ず必要ではありませんが、消毒と不足する栄養のひとつを補給する意味合いで使用しています。聖籠花壇では2年に1度ほどのペースで、秋の植え付け2週間ほど前に苦土石灰(+腐葉土)を撒いて土を耕して使っています。チューリップだけを同じ場所で何年も使用する場合は、一度試してみてください。白い粉末の消石灰(+腐葉土または肥料)でも大丈夫。こちらは植え付け1週間前までに!

【方法③】違う場所・違う土に植える

説明不要ですが、まったく違う場所に地植えする or 新しい培養土を使用するとなれば再生させる必要はありません。ただし、不要になった土はゴミとしてゴミ出しすることができません。ご注意を。

球根の保存

外皮を乾燥させたチューリップの球根は次の秋に植えるまで、そのまま日の当たらない&風通しのいい場所で保存します。球根は直射日光が当たり過ぎれば枯れ、湿気が溜まりすぎればカビたり腐敗したりします。球根も生き物であると思って扱ってもらえれば失敗しないと思います。

まずは下記の条件にあてはまる保存場所を決めてください。

日の当たらない場所」とは球根保存の場合は完全に日光を遮れる場所になります。
※100円ショップなどで売っている園芸用の黒の遮光ネットなどを使うと簡単に遮光できます。
風通しのいい場所とは乾燥期間中と同様で、空気が淀んで換気できない場所でなければいいという具合です。

場所が決まったら、どう置いておくかを決めます。 保存に適した場所によって決めてください。

台所で使う、排水口や三角コーナー用の「水切りネット」や「玉ねぎが入ってたネット」などに球根を入れて壁などから吊るしてもいいですし、100円ショップで通気性のいいカゴなどに入れて置いておくでもOKです(ここでは新聞紙は不要です)。ただし床や地面に直置きせず、下にもうひとつカゴをおくなど湿気がたまらないようにしましょう

▲サイズ分けされた球根の一部。ネットの口を絞って壁にかけて保存します。

当プロジェクトでは球根を乾燥させた後、おおまかにサイズ別に分けて数を数え(これは秋の植栽予定を立てるため)、その後サイズ別にネットに入れて物置の壁に吊るして保存しています。秋に植える前に球根の状態をチェックしますが、必ず保存の間にダメになってしまう球根もあります。

ここまで長々と球根の掘り上げ~保存までを説明してきましたが、植えて1年目は失敗も少ないと思いますので神経質にならず思う存分トライしてみてください。2年目以降は親より小さい子球が増えてくると思います。全部の球根を完璧に育てて保存までもっていくのは難しいですが、どうぞ選手を育てる気持ちで気長に付き合っていただければと思います。

チューリップの球根は、ここから秋までの間に球根内で次の開花に向けての下準備をし、休眠に入ります。植え方については「球根の植え方 ~植え付けから開花まで~」を参考にしてくださいね。

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